はじめに
センサーやミックスドシグナルICでは、デバイスの評価や量産時にIC内の回路の調整が必要となる場合があります。
CloudTesting™ Serviceを利用すれば、簡単にトリミングを行うことができます。
本書では、「トリミングを行う方法」の補足で述べた「パターンモディファイIPとCloudTesting™ Lab エキスパート・モードのループ制御機能を使用する方法」として疑似的なデバイスを用いてデバイス回路調整を行う手法を紹介します。
コンパレータ比較電圧(オフセット)の補正例
擬似デバイスの仕様
- コンパレータ回路への入力信号の電圧が比較電圧を超えると、検出信号がLow LevelからHigh Levelに変化する。
- コンパレータ回路の比較電圧の個体差を調整する為、Vref電圧に調整用オフセット電圧生成用DACの電圧を加えた電圧を入力する。
- 調整回路は1バイトのレジスタを持ち、そのレジスタにデータを書き込むことにより、比較電圧を調整することができる。
- 調整回路のレジスタのリード・ライトはパラレルI/Fからアクセスできる。
プログラムフロー
サンプルプログラムの詳細
テスト番号 | テスト名 | アルゴリズム名 | 備考 |
---|---|---|---|
0 | FUNCTIONAL TEST | Functional Testing IP | 検出信号のGo/No-Go判定を行います。 |
1000 | VREF min TEST | Generic Search IP | 最小の比較電圧をサーチします。 |
1001 | PRINT OFFSET_CODE | Comment Output IP | 調整回路用のオフセット値をコンソールに表示します。 |
1002 | UPDATE OFFSET PAT | Pattern Modify IP | 調整回路に印加するパターンを書き換えます。 |
1003 | ADJUST VREF OFFSET | Functional Testing IP | 調整回路にオフセット値を書き込みます。 |
補足
- コンパレータへの入力電圧値は、変数[VREF_VALUE]で指定します。
- 変数[VREF_VALUE]の値を変化させて、最小の比較電圧を求めます。
- 最小の比較電圧を元に、調整回路用のデータに変換し、変数[OFFSET_CODE]に格納します。この変換(演算)は、[Variable Table]で演算式を定義することによって、自動的に行われます。
- 変数[OFFSET_CODE]の値を用いて、テスト・パターンのデータを書き換えます。
- 書き換えたテスト・パターンによって、デバイスの調整回路への書き込みを行います。
可変抵抗器の調整例
擬似デバイスの仕様
- 可変抵抗器は1バイトのレジスタを持ち、レジスタにデータを書き込むことにより、抵抗値が変化する。
- レジスタのリード・ライトはパラレルI/Fからアクセスできる。
プログラムフロー
サンプルプログラムの詳細
テスト番号 | テスト名 | アルゴリズムIP | 備考 |
---|---|---|---|
2000 | PRINT REGISTER CODE | Comment Output IP | 可変抵抗器に設定するコードを確認します。 |
2001 | UPDATE REGISTER PAT | Pattern Modify IP | 可変抵抗器にアクセスするパターンを更新します。 |
2002 | CURRENT MEASURE | Power Supply Current Measure IP | 抵抗値に流れる電流を測定します。 |
2003 | REGISTER TEST | Value Judgement IP | 印加電圧値と電流値から求めた抵抗値を判定します。 |
2004 | PRINT FINAL REGISTER CODE | Comment Output IP | 可変抵抗器に設定されたコードを確認します。 |
補足
- 抵抗値を決めるコードは、変数[REGISTER_CODE]で指定します。
- 変数[REGISTER_CODE]の値を用いて、テスト・パターンのデータを書き換えます。
- 書き換えたテスト・パターンによって、可変抵抗器への書き込みを行います。
- 2003 REGISTER TESTがパスするまで、2000-2003を繰り返し実行します。
- 繰り返し実行の制御は、Flowの分岐制御により行います。
- 変数[REGSTER_CODE]の値は、繰り返し数と同じ値です(=システム変数[SYSMeasureItemExecuteCount])。
リファレンス電圧回路の調整例(バイナリサーチ)
疑似デバイスの仕様
- リファレンス電圧回路の出力電圧値は、個体差があり、それを補正するための調整回路がある。
- 調整回路は1バイトのレジスタを持ち、そのレジスタにデータを書き込むことにより、出力電圧を調整することができる。
- 調整回路のレジスタのリード・ライトはパラレルI/Fからアクセスできる。
プログラムフロー
インターポーズ解説
サンプルプログラムの詳細
テスト番号 | テスト名 | アルゴリズムIP | 備考 |
---|---|---|---|
3000 | WRITE CODE | Pattern Modify IP | 調整回路に書き込むパターンの中身を書き換えます。 |
3001 | PRINT CURRENT CODE | Comment Output IP | 書き込むコードをコンソールに表示します。 |
3002 | VOLTAGE MEASUREMENT | DC Parametric Measure IP | コードを書き込み電圧を測定します。 ※サンプルプログラムでは擬似電圧値を使用しています。その為、Value Judgement IPを使用して擬似測定値を判定しています。 |
3003 | WRITE CODE(FINAL) | Functional Testing IP | 調整済みコードを書き込みます。 |
補足
- 調整値を決めるコードは、変数[CODE_TO_WRITE]で指定します。
- 変数[CODE_TO_WRITE]の値を用いて、テスト・パターンのデータを書き換えます。
- 書き換えたテスト・パターンによって、デバイスの調整回路への書き込みを行います。
- 3002 VOLTAGE MEASUREMENTがパスするまで、3000-3002を繰り返し実行します。
- バイナリサーチによって最適なコードを求めます。
応用例
- Generic Search IPは、Functional Testing IPによるGo/No-Go判定だけでなく、Power SupplyやPMU, Digitizer, Counterを使用する測定IPも使用できます。
- 演算式を使用できるパラメータ(変数宣言テーブルやインターポーズなど)では、四則演算、ビット演算だけでなく、三項演算子やJavaのMathクラスを使った演算が可能です。
- 更に複雑な演算はInterpose algorithmを自作することにより実現可能です。
- 外部ツールとの連携はBatch File Execution IPにより行うことができます。
サンプルプログラムのダウンロード
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擬似デバイス回路例
“コンパレータ比較電圧(オフセット)の補正例”及び“可変抵抗器の調整例”のサンプルプログラムは以下の回路にて動作します。 これらのサンプルプログラムを実行する場合、以下の回路例に従って配線してください。 なお“リファレンス電圧回路の調整例(バイナリサーチ)”のサンプルプログラムは擬似デバイス回路は不要です。
免責事項
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